一般的にわたしたちがよく知っているお盆というのは、どちらかというと仏教行事の方ではないでしょうか?
でも、実は神道でもお盆行事は行われています。
というのも、実は日本のお盆とは、仏教の「先祖供養」と神道の「祖先崇拝」が混ざり合った行事なのです。
この祖先崇拝がまさに、日本の民族宗教であり日本固有の信仰である神道の考え方です。
ですから、神道でももちろんお盆はあります。
では、神道のお盆とはどんなものなのでしょうか?
盆踊りも本来、祖先の霊を慰め送り出すもので、あの有名な阿波踊りは盆踊りの一つなんですよ
目次
お盆は仏教だけじゃない!
一般にお盆とは、盂蘭盆(うらぼん)の略語とされ、あの世で苦しんでいる死者を供養し救う仏教行事とされています。
お盆は仏教の行事と思われがちですが、先祖供養の儀式は日本に古代からありました。
祖先崇拝、または祖霊信仰と言って、亡くなった祖先が生きている我々の生活に影響を与える、または与えることができると考える信仰です。
古くは縄文時代から、環状列石(※1)による、祖先崇拝を中心とした祭祀・儀礼が行われてきたことがわかっています。
古代日本では神道の方式でご先祖の供養をしていたのですが、奈良時代に仏教が伝来してから、仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)と神道の先祖供養と混同して、今の形になります。
江戸時代になり、幕府が庶民の先祖供養を仏式にする檀家制度を作ったために、お盆も仏教のみの行事と誤解されたまま現在に至っています。
したがってお盆とは、仏教が伝来する以前からこの国にもともとある風習がなのですね。
※1 環状列石…ストーンサークルのこと。イギリスのストーンヘンジが有名。日本にも北海道や秋田に遺跡が残る。
神道のお盆とはどういうものなのか?
神道にもお墓はあるの?神道でのお墓とは?
神道のお盆を説明する前に、神道のお墓について少し触れたいと思います。
皆さんのおうちにもお墓があると思うのですが、ほとんどが仏教式のお墓ではないでしょうか。
では、神道のお墓ってどんなものなのでしょう。
神道にもお墓はあるのでしょうか。
答え:神道にもお墓はあります。
神道ではお墓は「奥津城(おくつき)」と呼ばれます。
仏式では「○○家之墓」と書く部分が、神道では「○○家奥津城」と表記されます。
形状は、一般的な墓石と近い形のものもありますが、縦長の形がよく見られます。
一番上が、ピラミッドのようにとがっているのが特徴です。
神道ではお線香をあげる風習がないので、香炉がなく、代わりに花立てや八足(はっそく)台(※2)だけを設置します。
人の死を穢れとする風習から、神社には仏教のお寺と違って墓地がありません。
そこで、神道でお墓を建てるときは、遺族が公営や民営の霊園の墓地を選んでそこで供養します。
※2 八足台…ろうそくをたてる台。
奥津城と奥都城のちがい
「おくつき」には二種類の漢字が存在します。
奥津城と奥都城で、どちらも同じ「おくつき」と読みます。
元々、「奥都城」の方は神官や氏子を務めた人の墓で、「奥津城」は一般の人の墓という区別でしたが、現在では、墓所の近くに海や川などの水場がある場合は「奥津城」、それ以外は「奥都城」と表記する、という説があります。
しかし、基本的にはどちらでも問題はないようです。
仏教でいう仏壇のことを神道ではなんというのか?
仏教でいう仏壇のことを神道では、祖霊舎(それいしゃ)といいます。
神棚より一段低い位置に祀り、神棚同様に礼拝し、お供えをしますが、順番は神棚が先です。
神道では、自分たちの祖先が神様そのものと成りそして祖霊舎にて祀られます。
直接御霊(ご先祖)と向き合って手を合わせるのです。
用意する祖霊舎、霊代(たましろ※3)も神道の考えから、「偽りのない本当の姿」すなわち、「塗装をしない」「生地のまま」の「穢れのない白い木」白木(桧)作りです。
祖先を想う気持ちが形になったものですので、神具もシンプルで、土から作られた陶器(白い瀬戸物)などで揃えます。
お供えするものは、
・さかき (一族の繁栄(「さかえる」)を願う)
・ご神酒 (「いのち」の「ね」である「いね(稲)」から採れるもの)
・米 (大地の恵みの代表)
・塩 (海の恵みの代表)
・水 (すべての生き物の命の源)
・ローソク (聖域を清める炎)
・鏡 (心の中の神を映し出す)
の基本7点です。
また神道では、神は神聖なもので直接目にしてはいけないもの(目に見えぬもの)との考えから、仏教の位牌とは違い、祖霊舎に納める霊代(霊璽=れいじ)には鞘(さや)と呼ばれる蓋が付き、人の目に触れぬように気遣われています。
この鞘は一年365日外すことはほとんどありません。
この点が神道と仏教の大きな違いです。
※3 霊代…神や死者の霊の代わりとしてまつるもの。
神道のお盆行事とは?
神道のお盆は仏教とほとんど変わりません。
お祭りの仕方が仏式か神式かの違いだけです。
これは、古来から日本の生活習慣・信仰として行われていた、「ご先祖さまを迎える」という神事・行事に外来の仏教が入り込み、時代の変遷と共に融合しているからで、「ご先祖さまをお迎えする祭り」 であることは変わらないからです。
神道ではお盆に行う祭祀のことを、盆祭(ぼんさい)または中元祭(ちゅうげんさい)と呼び、お墓参りをしたり自宅に氏神の神官を招いて執り行います。
仏式のお寺での法要と違い、神式では故人の祭りを神社で行うことはありません。自宅で祭ります。
死は穢れですから、聖域である神社では行いません。
神道のお盆のスケジュールも仏教のものとあまり変わりがありません。
仏教のお盆に旧盆や月遅れの盆があるように、神道でも地域によって時期はことなります。
関東方面は新暦で行い、西日本方面は月遅れの8月にお盆を行うのが多いようです。
宗教行事に関係なく、いわゆる企業等の夏休みのことをお盆休みと呼び、全国的には八月に休みとしているところが多いようです。
神道のお盆の日程
神道のお盆でも、仏教と同じように、地域によって行う日時が違います。
●仏教のお盆について詳しくはこちら
✔お盆の準備7日:7日盆(なぬかぼん)
まずは先祖をお迎えするために、お墓の掃除と家の中や外周を掃除し、
祖霊舎やお供えを乗せる祭壇を作りお盆の準備をします。
祭壇は、床の間がある家では床の間に設け、床の間がない場合は、神職の祭事が執り行うことが出来て、参列者が入れる大きさの部屋を選びます。
また、祭壇の位置は、北向きにならないようにします。
祭壇の形式は、段でも、広い卓台でも特に問題はありません。
✔お盆 13日:迎え盆・迎え火
13日までに、祭壇に飾る必要なものを用意しておき、午前中に、お供え物などを祭壇に飾ります。
新盆祭に使う盆提灯は、初めて現世に帰ってくる故人の霊が迷わないための目印に、「白盆提灯」を使い、お盆が終わってから燃やします。
また、神道の盆提灯は、白木に無地や墨絵・家紋が入った清廉なイメージの盆提灯が基本です。
祭壇や精霊棚を用意してから、ご先祖様の墓参りをします。
お盆入りの13日の夕方には、家に戻ってくる祖霊(先祖の霊)が迷わないように、自宅の門前で迎え火を焚き、ご先祖さまをお招きします。
✔お盆 15日:盆祭・中元祭
初盆や新盆の時はもちろんですが、毎年の神道のお盆でも氏神様の神職をお迎えし、祝詞奏上を行い、列席者が順番に玉串奉奠をした後に、列席者で会食をし先祖に感謝をしながら供養します。
神道におけるお盆15日を中元祭と呼ぶのは、明治以前は陰暦が使われていて、道教では、1年を「三元」に分け、
1月15日を「上元」、
7月15日を「中元」、
10月5日を「下元」と言い、
この道教の呼び方がお盆の行事に取り入れられたと考えられ、陰暦の15日を「ぼんの祭り」や「中元祭」と神道では呼ぶようになったとされています。
神道のお盆の祖霊には、四日間は三度の食事も家族と同じものを供え、家族も本来は生臭さを避けた精進料理をいただきます。
✔お盆 16日:送り盆・送り火
夕方には、祖霊があの世に無事につくようにと願いをこめ、家の門前で送り火焚きをし、精霊棚や祭壇を片付けて、ご先祖様の霊をお見送りします。
まとめ
神道って、なんだかすごく神秘的で、すごく難しい印象を持っていたけれど、実は日本人の暮らしにとけ込んでいるんですよね。
たとえば、初詣や厄除、初宮参りや七五三、結婚式や地鎮祭など、神道の行事は日常生活の中で当たり前のように行われています。
ところが、あまりにも当たり前に過ごしてしまっていることと、仏教というもう一つの日本人に身近な宗教があるので、神道について知らなかったり、仏教とごっちゃになってしまっていたりします。神仏習合のせいもありますね。
でも、神道とは日本の土着の宗教で、日本の古代から現代に続く民族宗教なので、こういう大切なことは、日本人としてきちんと学んでおきたいなと思いました♪
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